取っ掛かりがない女と必死な女の漫才

「ねー、という訳で漫才をしていきますけど」
「わたしね、スイーツを食べたいんですよ」
「ほぉ、スイーツ」
「スイーツをね、食べたいんですけど」
「うん」
「すごくね、食べたいんですよ」
「スイーツを」
「はい」
「どんなスイーツを食べたい?」
「まあ、何でもいいですね」
「何でも」
「はい」
「特に食べたいやつとか」
「あります、あります!」
「おっ!なになに?」
「あのー、たくさんあります」
「たくさん」
「そうですね」
「その……。たくさんというと?」
「結構ある感じですかね」
「なるほど……。あの、行きたいお店とかは?」
「ないですね」
「ない」
「はい、コンビニのスイーツで十分ですね」
「いや、ちゃんとしたお店行けば、もっと美味しいのが食べれるじゃない」
「そんなにね、お金もないですから」
「お金」
「そうですね」
「お金出すから、一緒に行こうよ」
「あんまりそういう店に行ったことないし、勝手が分からないから気乗りしませんね」
「じゃあ、練習しよう!わたしが店員やるから」
「いや、大丈夫。結構です」
「え?」
「あの、本当にコンビニのスイーツで大丈夫なので」
「じゃあ、わたしコンビニの店員やるから、買う練習しよう」
「いや、さすがにコンビニは使い慣れているので、大丈夫です」
「そう」
「そうですね」
「終わる?」
「何をですか」
「漫才を」
「どちらでも大丈夫です」
「じゃあ、終わろう!」
「了解です」
「ありがとうございましたー」